「新垣さん、今日の画像を見てましたら、手術の必要はなさそうです。ですが、ちょっと難しい骨の場所っていうのもあって、ギプスを少し長めにつける必要があります」


2週間の予定だったギプスが、3週間にのびた。

サッカーができない、とガッカリする空。

また、幼稚園に行けない日々が続く。
プレ幼稚園なので、治るまでは行けないことになっていた。

大好きになった幼稚園だったのに。



「じゃあ、ママといろんなことしようね」


「やだ…… もうやだ」



会計を待つ病院の待合室で、空は珍しく駄々をこねるように大声で泣いた。


これが普通の3歳児なんだ。

空は物分かりが良すぎて、我慢していたんだよね。



その日の夜、夜泣きをして、抱っこしても何をしても暴れて、こんな空を見るのは初めてだった。



「空は無理してたんだな」


「2週間は頑張ろうって思ってたんだよね、空」


「ああ、しばらく荒れるかもしれない。直も、あんまり無理すんなよ。俺に何でも話して」


「うん、でも……空がかわいそう。頑張ってたのに」



涙が溢れる。

疲れ果てて寝てしまった空。
泣きつかれたんだ。



「直、直のせいじゃない。誰のせいでもないから。家族で乗り越えような」


先生の温かい声も力強い腕も、今の私には届かなった。



親になる、守るべきものができるって、こんなにも辛く、苦しいことでもある。
それを実感していた。



空の苦しみを全部なくすことなんてできない。

空のこれから出会う困難を消すこともできない。

親である私たちは、それを見守ることしかできない。



でも、愛しい我が子が苦しんだり悲しんだり、困ったりする姿を見るってことがこんなにも辛いなんて……