『どっちにしろ、俺らは別れてたよ』
由樹君はそう言うと、自分に買ったコーヒーを開けて、口にする。
『………どういうこと?』
『俺らは所詮、お互いが好きで一緒にいたわけじゃないから』
そういう由樹君は、少し悲しそうな顔を見せる。
『俺と奈々はさ、結局相手にぶつかるのが怖い者同士だったんだ』
淡々と話していく由樹君の言葉を私はしっかり聞こうと思った。
『俺、実は、最初は知佳のことが好きだったんだよ?
知佳、気づいていた?』
そう言って、由樹君は私の顔を見つめる。
その憂い顔に、私はドキッとした。
『知佳のことが気になって、知佳を好きになった。
けど、あの頃の知佳はまだ俺を意識してなくて、いつも崇人とじゃれあってた。
そんな知佳の想いが崇人に向いてる気がして、知佳に気持ちを伝えるのが怖かったんだ』
嘘、
…だと、思った。
由樹君が私を好きになるはずがない…
だって、私の知ってる由樹君は最初から奈々を…好きだった……よ?
『でも、俺と同じように笑いながら陰で泣いてる奴がいた。
それが、崇人を好きになった奈々だったんだ。
奈々も崇人を好きになった、でも崇人は知佳を想ってた…
だから奈々はいつも泣いてて、俺と同じだと思ったんだ』
『ちょ……ちょっと待って。
今の言葉の中におかしいのが……』
『崇人が知佳を想ってた、ってところ?』
由樹君の問いかけに、私は首を縦に何度も振った。
『だって、崇人は私に…。
“俺もお前と同じ”って、そう言って…だから私たちは……』
いつも、由樹君と奈々のいないところで泣いたんだよ?
由樹君と奈々のいないところで愚痴を言って、励ましあって…
『崇人は知佳のことが好きだったよ』

