海賊王女と無敵な人魚の王子さま

 これはきっと。


 アヴェルスは『人間と関わるな』っていう人魚同士の禁忌を破って、いつもわたしを助けてくれているから。


 なにか、彼の立場が危うくなる事態が、海で起っているのかも知れなかった。


 ごめんなさい!


 思わず、手をぎゅっと握りしめると、アヴェルスはそっとわたしの唇に口づけて、酸素をくれると、首を振る。


『俺は、俺のやりたいようにやっているだけ。
 だから、気にしなくていいよ。
 ただ、今は、大きな魔法が使えなくて……悪かったな。
 紅の自由号に海賊船が近づいた時点で、船底に穴でも開けられたら、イリスもケガをしなくて済んだのに』


 ううん! わたしは、アヴェルスの加護を……愛情の形で充分に貰っているから。


 海に落ちれば、息が詰まって意識を失うことはあっても、溺れて死ぬことは無い。


 それだけでも、海の上で生きるモノとしては、とてもとても安心なコトなんだ。


 ああ、優しいキレイな人魚のアヴェルス。


 わたしも、あなたのことが大好き、だよ?