海賊王女と無敵な人魚の王子さま

 そして、もし、アヴェルスが人間ならば。


 紅の自由号で、一緒に旅をしていたろうに。


 海と陸とが、アヴェルスとわたしを人魚と人間に分けるんだ。


 ……しかも。


 水の中で響く『ガシャリ』って言う不吉な音に良く良く見れば。


 アヴェルスの両手首に、鎖が繋がれてるのに気がついた。


 泳ぐにも、わたしを抱きしめるにも邪魔にならない長さだったけれど!


 アヴェルスは、この世界の『水』を支配する人魚の王子さまなのに。


 誰がアヴェルスを捕まえるっていうんだろう?


 これは、もしかして!


 嫌な予感に、アヴェルスを見上げれば、彼はちょっと困ったようにほほ笑んだ。


『ああ、今。
 親父の海王とごたついててさ。
 話し合いの最中に抜け出して来たから』


 話し合いって!


 どこの世界に、息子を鎖で縛って『話し合い』をする親がいるんだろう!