海賊王女と無敵な人魚の王子さま

 わたしを抱き締めて泳いでいるのは、蒼銀の人魚の王子さま。


 彼は、わたしの撃たれた肩を見てギリと奥歯を噛んだ。


『血がこんなに流れてる……
 お前はなんて姿で、海に落ちて来るんだ!
 生きてるか!? 苦しいか?
 今、息の出来る海面に連れて行ってやるからな!』


 エタンセルとジーヴルは何をやってるんだ!


 なんて。


 普段から見慣れたキレイな顔が怒ってる。


 けれども、わたしが平気だよって、無事な方の手で、アヴェルスの頬を触ったとたん。


 彼の顔が泣きそうに歪んだ。


『なんで、いつもイリスは、無茶ばかりするんだ?
 もし、お前が人魚だったら。
 海底の珊瑚の宮殿に大事に閉じ込めて、一生外には出さないのに。
 それに俺が、人間だったなら。
 髪の一筋さえ、傷つけさせないのに……』


 そうだね。


 もしもわたしが、人魚なら。


 きっとわたしは、アヴェルスの花嫁になって、喜んで海の底に暮らしてた。