海賊王女と無敵な人魚の王子さま

 早く! 早く、魔法を完成させなくちゃ!


 そう、叫びたいほどに、焦る心を抑えて、わたしはよどみなく呪文を紡ぐ。


 つい、この前まで、魔法で栄えていたフロンティエ-ルだったけれど。


 今、この船で、攻撃魔法を使える魔法使いはわたししかいないんだ。


 紅の仲間たちのうち、魔法を使わない白兵部隊が、どんなに強くても。ワイヤーで飛ぶことができても。


 使うヒトを選ばない上、早く大きな爆発を産むことのできる火薬を使った新兵器には、勝てないなら。


 結局負けるのは……滅ぶのは、紅の方なんだ。


 そう。


 火薬を発明した『福包国』に攻撃されて、わたし達の国『フロンティエール』が滅びた時のように。


 時間のかかる魔法では、全部手遅れになってしまうかもしれない。


 けれどもわたしは、ただ。


 みんなを助けたいって思う心一つの、時代遅れの魔法を紡ぐことだけしか、出来ないから。


 魔法の呪文を唱えている間は、ただ、みつめてることしか、出来ないから。