2番目の唇


「はい。システ」
『すぐ来てくれ!』

電話の相手はかなり焦っているらしく、私の名乗りを途中で遮るように言った。

子供じゃないんだから、まずは、名前くらい名乗れよ。

そして、名乗らせろ。


軽くムッとしながらも、私は仕事用の愛想の良い声を作る。

「どちらの部署ですか?」
『営業企画課!3階の突き当たりだ。できるだけ急いで来てくれないか』


ほう。

これはまた、珍しい部署から連絡が来ましたねぇ。


このやり取りで残業時間延長決定の私は、少し意地悪な気持ちで殊更ゆっくりと優しい声を作って定型の確認を行った。


「どのような状況か、教えて頂けますか?」

『いきなり電源が落ちて・・・ったく、共有フォルダも開かないし・・・』


あー、それはサーバがストップしてるからですね。

でも、電源落ちたのは違うでしょう。

イライラしたって、ダメなものはダメなのよ(笑)


「わかりました。今からそちらに向かいますので、そのままの状態でお待ち下さい」

私は笑いたい気持ちを抑え、涼しい声で答えると、受話器を置いた。