少し歩くと、あの木が見えた。 よかった。 枯れてはいないようだ。 肩から提げている鞄には 彼女の大好きだったチョコレートが入っている。 また前みたいに 寄ってきてくれればいいのだけれど……。 期待と不安が入り混じった ちょっと複雑な感情を抱きながら 僕はその木に歩み寄る。 本当に全てが昔のままであれば 当時みたく彼女が驚かせようとしてくるはずだ。 木のすぐ近くまでやってきた。 わざとその木に興味がないような素振りで 前を通り過ぎようとしてみる。 すると――。