僕は雨が好きだ。

鼻が湿っていくような土臭い匂い。

車のライトに照らされて鈍く光る道路。

ノックでもしているかのように、

傘の布地の上を飛び跳ねる雨粒と、

水たまりに広がる小さな波紋。

そして、水面に映る歪んだ自分。

まるで、異世界に迷い込んでしまったという不思議な感覚に僕は落ちいった。

ゆっくりと噛み締めるように。

このときがたまらなく好きだ。

だから、今日も古びたビニール傘をさして街に出る