冷たく見下ろされた私は、つい視線を下げてしまう。





すると、君はまたこんなことを言うんだ。








「お前だって、嫌だったんだろ?

 解放してやるっつってんだから、それでいいだろ?


 
 …今後、俺には関わるな。


 じゃあな、ハナサキさん」







君は扉に向かって歩き出した。






そして、扉を開く直前。




「そうだ」






なにか、思い出したような声を出す。






「俺のこと、もう"匠くん"って呼ぶなよ」






それだけ言うと、君は扉の向こうに消えていった。






ただ、呆然と




立ち尽くしていた。








噛みしめていた唇から、ふと苦い味がして。


触れてみればそれは血で。







私は床にしゃがみこみ、

さっき君に言われたことを思い出してみる。