自宅に連れ帰った僕は彼女の綺麗な手に手錠をかけ、すらりとした長い足を縄で縛ると、赤いサテンの布で目を隠した。


車を出すと後部座席に寝転ばせ、向かうのは、近くの山の中の家。


…そこは僕以外に誰も知らない、死んだ祖父の家だった場所。


ミラーに映る彼女の姿を目に入れると、無意識に笑いがこぼれた。


…山の家に着いたら、ずっとずっと可愛がって、愛おしんであげるから。


ずっと、ずっと、老いの果てに、君が死んでしまっても。


行き道、ウィンドウガラスに降り注ぐ雨が僕らの門出を祝福しているかのように感じられた。




山の中の家に着くと、彼女を優しく抱き抱え、一室へと運び込む。


あらかじめ掃除をしていたから塵一つなく、部屋の端に置いたベッドのシーツには僅かなシワもない。


ベッドに彼女を寝かせると、部屋の外に出て鍵を閉めた。


この鍵は、部屋の中から開けることは絶対にできない。


目が覚めたら、存分に、小動物のように可愛がってあげよう。


たっぷりと、慈しんであげよう。


今はただ、眠ればいい。


この家にはたくさんの食料を備えてあるし、バスルームも、洋服だってある。


僕ら二人だけで、暮らしていくのさ。


…ずっと、ね。


…慣れないことをしたから、喉が渇いたな。


美味しいコーヒーでも淹れようか。


捜索願が出されても、まさか彼女がこんなところにいるなんて、誰も思わないだろう。


キッチンのある部屋に向かい、僕は笑んだ。