数十分しか離れていないけど、やっぱりそれでも、沙奈に会えるのは嬉しい。


…まぁ、今日のところは食事をあげるだけで、何もしないつもりだけどね。


部屋に向かい、扉を開けると、そこには手錠を外そうともがく沙奈がいた。


「…何してるんだい、沙奈?」


「あっ…」


沙奈は僕の声に気づき、動きを止めた。


顔色が、青くなってくる。


「…逃げようとした?」


「し…してな…」


「…悪い子だね。まぁいいよ。ホットケーキを作ってきたんだ、食べなよ」


「…っ」


返事をしない沙奈に歩み寄ると、僕は細切れにしたホットケーキの欠片を右手で掴み、彼女の口に運んだ。


「ほら、口を開けて」


…沙奈は頑なに口を閉ざし、ホットケーキを食べようとしない。


唇につけてみたけれど、顔をしかめて口に入れようとはしなかった。


「普通のホットケーキだよ?変なものは、何も入れてない」


「…」


それでも沙奈は沈黙を続け、けして口を開けようとはしない。


目隠しをしていてわからないけど、沙奈はきっと今にも僕を睨み殺そうなくらいに鋭い目をしているのだろう。


…どうして?


「ほら、食べなよ。…食べたくないの?」


「…」


だんだん苛立ちが湧いてきて、僕は沙奈の口に右手で掴んだホットケーキを押し付けた。