髪がザワッと逆立つような気がした。
こいつ、なぜ知ってる? 何を、知ってるんだ?
思わず、拳を固めた。
手のひらに爪が突き立って、チリッと痛む。
「鈴蘭さんには、聞いてもらいたいです。鈴蘭さんは、全部を知る権利が、あります」
師央が言った。
安豊寺は師央を見つめた。
「権利の根拠は? わたしの血筋? それとも、わたしの未来に関係があるの?」
ひとつ、沈黙。師央が言葉を選ぶための、空白。
選ばれた言葉たちが紡がれる。
「ぼくは、鈴蘭さんの未来や運命を知っています。それが、ぼくがここにいる理由です」
「わたしの未来に、何が……」



