「さっき、部室にいただろ。三年の亜美さん。兄貴は昔から、亜美さんしかいないって言ってる。親同士も認めてたしな。許嫁って言っていい」
安豊寺は立ち止まって、ポカンとしている。
師央が恐る恐る声をかける。
「あの、鈴蘭さん?」
「……えーっと……びっくりした……ごめん、うん、平気。そ、そっか、そうなんだ。文徳先輩、許嫁がいるんだ」
兄貴のこと、気になってたのか?
「残念だったな。さっさと歩け。暗くならないうちに帰るほうがいい」
ポカンとしてた安豊寺が、怒り顔になった。
「デリカシーないですよね、煥先輩」
勝手に言ってろ。



