リビングに硝煙の匂いが立ち込めていた。 汚れた絨毯に身を伏せた少年は察していた。 日常はもう戻ってこない、と。 「だから、行け。行って、戦え」 伯父は少年に告げた。 その目からは、急速に命の灯が消えつつある。 「でも、このままじゃ……」 「このままじゃ共倒れだ。私のことはいい。行け、師央《しおう》」 伯父は大きな手のひらで少年の頬を包んだ。 少年は、泣いてはいなかった。 泣きたいと思った。 純白の宝珠が少年の手の中でまたたいた。 急かすかのように、チカチカと、せわしないリズムだ。