銀髪の男はオレで、赤ん坊は師央だ。
横たわるオレの唇が、かすかに動いた。
鈴蘭と師央の名を呼んでいる。
「鈴蘭、バカか!? 自分のほうを先に治せって言っただろ!」
大人の姿の鈴蘭は、目を閉じて動かない。
腹に血の染みが広がっている。
治療する鈴蘭は、その傷口に右手をかざしたまま、オレの声に顔を上げた。
痛みに顔をしかめて、涙で頬が濡れている。
唇の色がなくなってるのがわかる。
せわしない息をしている。
「あ、煥先輩の、傷のほうが、深かったの。だから、先に」
鈴蘭の声がわなないている。
鈴蘭の左手を両手で握った師央も、苦痛の声を漏らしながら顔を伏せている。



