暗がりから、ゆらりと、男が姿を見せた。
二十代後半ってところか。
細身で、爬虫類みたいな目つきをしている。
「正木か?」
オレの問いかけに、男は笑った。
「阿里くんが紹介してくれたようだな。そう、私が正木竜清だ」
銃、ではなかった。
正木が海牙への狙撃に使ったモノは、右手だ。子どもが人差し指でピストルのまねをするみたいに。
でも、本物だ。正木の指先に、闇が凝り固まった。
能力、狙撃《sniping》。
正木の指先から撃ち出された銃弾が、オレの障壁に衝突して焼け尽きる。
オレの背後で海牙が解説した。
「大気中の窒素を固定して固体化し、銃弾にする。窒素は、大気の八割を占める元素です。地球上にいる限り、正木さんの銃弾は無限に近い」



