歌がほしい。 歌ってないオレは、自分の感情に戸惑う。 胸の高鳴りの理由を探しながら、自分で自分がつかめない。 いつの間にか固めていた拳に、細い指が、小さな手が、触れた。 ビクリとしてしまう。 こわばるオレの拳から、鈴蘭の手が離れる。 「ご、ごめんなさい」 触れたのは偶然? それとも。 オレは拳をほどいた。 少しだけ指を動かす。 鈴蘭の指に触れた。 今までまともに動こうとしなかった口が、急に、言葉を吐き始める。 「鈴蘭、オレは……」 何か言いかけた。