枯山水の庭を抜けていく。
西日を浴びた池が、オレンジ色にきらめいている。
松の木の陰から、不意に。
巨大な黒い犬が現れた。
ガッシリとデカい頭が、オレの胸の高さにある。
さすがに、オレでもギョッとした。
鈴蘭が、のどの奥で悲鳴をあげた。
黒い犬が口を開いた。
ゴツい牙と薄い舌を持つ口が、器用に動く。
「よぉ、おかえり、海牙。
友達でも連れて来たのか?」
しゃべった。
犬がしゃべった。
低い男の声で、普通にしゃべった。
聞き間違い?
じゃないよな。
鈴蘭も師央も理仁も、目を見張って固まっている。
海牙は平然としていた。
「ただいまです、アジュさん。
こちら、総統がお呼びの皆さんですよ」



