オレはとっさに口走った。
「おもしろくねぇよ。付き合ってもいない女と夫婦扱い? しかもガキまでセットで? 冗談じゃねえ」
一瞬、間があった。
ふわっと何かが飛んできた。反射的にキャッチする。
布だ。弁当を包んでいたピンク色のハンカチ。
投げたのは、鈴蘭だ。
「バカ、無神経っ」
罵られて、気付く。オレ自身、自分の言葉に傷付いた。
――オレの宝物――
守るべきもの。
――妻と息子――
約束された未来。
思い出に似た情景が、胸にひらめく。
戸惑う。
知らないはずの感情が、経験済みの日常として、オレの中に広がっていく。
――愛してる――
愛?



