言葉より先に手が出た。


オレは師央の額を指で弾いた。



「ふざけたこと言ってねぇで、さっさと行くぞ。鈴蘭も、突っ立ってんじゃねえ」



鈴蘭のカバンを肩に引っかけて、大股で歩き出す。


朝の風の涼しさを、急に感じた。


不覚にも顔が熱いせいだ。



師央が小走りで追いついてきた。



「煥さん、歩くの速いですよ。照れ屋ですよね」



「黙れ」



「やっぱり鈴蘭さんのことを意識……」



「してねぇよ」



鈴蘭も追いついてきた。


師央は満面に笑みを浮かべたまま黙る。


鈴蘭は、うわずりがちな声で話題を変えた。



「し、師央くん、昨日の化学の課題、解けた?」