軽やかに笑う声。
オレたちの視界に映る闇が、ひとつ、ほろりと剥がれる。
背の高い男が、そこに立っている。
黒よりも夜に紛れる暗色の服。波打つ髪と、彫りの深い顔立ち。
微笑む目は、緑がかっているはずだ。
そいつが歩いてくる。足取りは体重を感じさせない。
オレは目を細めてみせた。
「カイガ、だったか?」
「ええ。そのとおり。後ろの彼が、ぼくの名前を知ってたんでしたね。海の牙と書いて、海牙《かいが》です。
改めて、名乗らせてもらいますね。大都高校三年、阿里《あさと》海牙。得意科目は物理。能力は、力学《physics》」
「能力者か!」



