潮風が逆巻いた。
海鳴りが放つ潮の匂いに、不意に。
「誰だっ!?」
気配が混じった。
何者かが闇に潜んで、動いたんだ。
「へぇ。気付いたんですか。さすが、最強と言われるだけのことはある」
風にあおられながらも、その声はよく聞こえた。若い男の声だ。
瑪都流の全員が同時に動いた。
正確に同じほうをにらんで身構える。
中心に師央を守る陣形。
オレが先頭へ飛び出した。
兄貴が静かな問いを放った。
「きさま、誰だ?」
「初めましてのかたが、四名。ほか二名には挨拶させてもらったけどね。そうか。名乗るのは、忘れていたかな」



