師央はそのまま、すすり泣いていた。
兄貴が師央と亜美さんに近寄って、二人まとめて腕の中に抱いた。
もどかしい。
本当はオレがそこにいなきゃいけない。そんな気がするのに、体が動かない。
頭の芯が痺れて思考が止まる。
代わりに流れ込んでくる、何か。情念のような、後悔のような。
――バイクのこと、唄のこと――
語り合いたかった。
――高校時代のこと、恋のこと――
話して聞かせたかった。
オレは、ハッとして、墓石を振り返る。
――これは記憶――
誰の?
――父としての――
オレ?
オレが、そこに眠る未来?



