「ちょっと、師央、どうしたの? 何で泣いてるのよ?」 亜美さんの声で、オレは振り返った。 呆然とした顔の師央が、自分の頬に触れていた。 涙が流れていることに、今、気付いたらしい。 師央がきつく目を閉じた。 涙のしずくが、いくつか風に飛ばされた。 「ごめん、なさい。自分の両親のこと、思い出して」 オレと兄貴は顔を見合わせた。 そして確信する。 この胸騒ぎを、兄貴も感じている。 オレは、息子が十五歳になる前に死ぬ?