おふくろは優しい人で、料理が上手だったらしい。
早熟だった亜美さんは、おふくろに料理を教わっていて、今でもその味を作りに来てくれる。煮物とか卵焼きとか味噌汁とか。
呆れた話なんだが、師央の料理は、亜美さんのと味が似ている。
「伯母から料理を教わりました」
信じられるか?
伯父である兄貴の奥さんから、料理を教わった。
それはつまり、亜美さんから教わったって意味だ。
亜美さんは、おふくろの味を習得していて、師央もその味を再現できる。
おふくろが生きていたら、師央の味が本物なのかどうか、本当におふくろの味なのかどうか、確かめられたのに。



