鈴蘭は、傷付いた指を口にくわえた。針を裁縫箱にしまう。
ふと、オレは思い付いたことを口にした。
「自分の傷を治療することはできるのか?」
「能力を使って、って意味ですか? やったことないです。原理的には、できると思います。傷の痛みを別の場所に移せれば、傷を治せるはずです。ただ、誰かに協力してもらう必要はありますよね」
なんとなく、視線が絡み合った。
「やってみるか?」
「いいんですか?」
「その程度のケガなら、たいして痛くもない」
「またそんなこと言う」
鈴蘭はため息をついて、左手をオレのほうへ差し出した。
「何だ?」



