「煥先輩」
「話せって?」
「できれば、聞かせてください」
鈴蘭がオレを見ている。
オレも鈴蘭を見下ろす。
そういう表情は、覚えてる。
お節介で、勝手な責任感に満ちてて、どこか憐みを含んでいる。
信用できなかった大人たちと同じ。
聞くだけ聞いて、でも、どうせ他人事。
オレなんか、どうしようもないだろ。
「小学生のころ、親が死んだ。葬式の日、オレはクラスメイトにケガをさせた。うっかりして、障壁を出したんだ。それに触れたやつの手が、焼けた。一生消えないヤケドだ。みんなオレを怖がった。
以来、オレは檻の中。中学に上がるまで、ずっとだ」



