小学生のころ、両親が“事故死”した。
不審点も多かったが、結局“事故死”だった。
父方の親戚はいない。
伊呂波の邸宅も財産も処分した。
弁護士だか税理士だか、顧問がいた。
あの人だけは、当時から信用できた。
今でもたまに会う。
母方の親戚も同じ町に住んでいた。
順々にたらい回しにされた。
オレと兄貴を、しばらく引き受ける。
期間が済むと、オレたちを次の家へ任せて、自分たちは引っ越していく。
小学校時代の自分を、オレはあまり覚えていない。
ほとんど教室で過ごさなかった。
スクールカウンセラーの部屋に一日じゅう閉じ込められて、校庭にも教室にも行けなかった。



