殴り書きの言葉がメモ帳にあふれる。
詞を綴るときのオレは無防備だ。
今まで、誰かのそばで書いたことなんかない。
なのに、どうして?
鈴蘭の目の前だから、詞が浮かんできた。
そのくせ、鈴蘭に贈る詞でもない。
ただの、オレ自身の臆病さを歌った詞だ。
「バカか、オレ」
出て来た言葉の軟弱さに、ため息をついた。そのときだった。
「んんっ」
鈴蘭が、くぐもった声を漏らした。
また、オレはドキリとする。
自分の心臓に舌打ちしたくなった。まじめに仕事しろ。
オレが見ている目の前で、鈴蘭はゆっくりとまぶたを開けた。



