不意に、切れ切れの言葉が頭をかすめた。
そうか、これだ。これを詞にしたらいい。
オレはカバンからメモ帳を出した。
鈴蘭の向かいの席に座る。
あぶくみたいに、湧いて消える言葉。
消える寸前に、ペンでメモ帳につかまえる。
今、感じたこと。
目に見える距離と、見えない距離。
見つめ返されないときだけ、安全。
まるで、子どもの遊びだ。
だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ。
振り返られないうちに。見つめられないうちに。
初めて、じっと、こんなに長く誰かを見つめている。息を詰めて、胸を押さえて。
オレの髪が銀じゃなければ、オレの目が金じゃなければ、見つめ返されることも、きっと平気なのに。



