図書室は二つのエリアに分かれている。
ずらりと本棚が並ぶ書架エリア。読書や勉強をするための閲覧エリア。
閲覧エリアには、八人掛けの机が八つある。
鈴蘭はいつも、閲覧エリアの窓際の席にいる。
下校時刻が迫っていた。
閲覧エリアには鈴蘭一人がいた。
おい、と声をかけようとして、オレは息を止めた。
鈴蘭が眠っている。
読みかけの本が伏せてある。
そのそばで、右の頬を下にして、左向きの横顔を表に見せながら、鈴蘭はしなやかな寝息をたてている。
襲われたらどうするんだと、とっさに思った。
違うと気付いた。
オレ、今、襲いそうになった?



