兄貴がおもしろがっていた。
師央がオロオロしていた。
騒ぎの元凶の理仁は、鈴蘭に手を差し伸べている。
「さわらないでください!」
「さわるっていうか、手を握るだけ」
「来ないでってば!」
鈴蘭が思いっきり、理仁の手を払いのけた。
「何やってんだ?」
「お、あっきー遅いよ~。おれ、待ちくたびれてさ。女の子成分の補給をしようかと」
鈴蘭は兄貴の後ろに逃げ込んだ。
「文徳先輩、どうにかしてください! わたし、ああいう人、苦手です!」
「とのことだぞ、理仁。無理強いはするな」
「はいはい、しないよ~。無理強いしようにも、号令《command》が効かないしね~」



