漂いかけた緊迫感を打ち破るように、予鈴が鳴った。


兄貴が理仁を促した。



「さすがに、遊びはここまでにしよう。補習をサボれたし、おれは満足だ」



兄貴、やっぱり補習サボってんじゃねぇか。


オレに鈴蘭の迎えを押し付けやがって。



理仁は兄貴にうなずいてみせた。



「りょーかい。でもさ~、文徳。おれ、ちょっと話し足りないんだよね」



「そうだな、放課後、部室にでも来い。それとも、屋上を開けてもらえるか?」



「お、いいね。親父んとこから鍵かっぱらってくる」



兄貴が理仁を指して言った。



「付け加えておくと、理仁は、襄陽学園理事長の息子だ」



マジかよ。典型的な放蕩息子だな。