ようやく中心部までたどり着いた。
兄貴は「よう」と片手を挙げた。
もう片方の手は、亜美さんの髪を撫でている。
「よう、じゃないだろ。どうなってんだよ、これは?」
「学校じゅうの女子に囲まれる体験ってさ、たまにはおもしろいだろ?」
「オレはごめんだな。どういう手品だ?」
兄貴は肩をすくめて、隣の男を見た。
異様に声の響くその男は、朱い色の瞳をしている。
そいつはオレに笑いかけた。
「初めましてだね~。おれ、長江理仁《ながえ・りひと》。文徳のタメで、親友だよ。よろしく~」
軽いノリのしゃべり方が、なんか疲れる。



