《弟くん、困ってるっぽいね~。前に進めませんって感じ? みんな聞いて~!》
異様に響き渡る声が呼びかけた。
その瞬間、水を打ったように、世界が静まり返った。
《道、開けてやって~!》
音、じゃなかった。
そいつの声は、音じゃない何かが本体だ。
だから、異様に遠くまで聞こえてくる。
声なのに音じゃないって意味では、白獣珠の声と似てる。
人の群れが割れた。
そいつの命令に、完璧に従うみたいに。
《ほらほら、弟くん、おいでよ~。一緒に女の子たちに囲まれようぜ。弟くんファンも多いって聞いてるよ~》
そのとたん、そこここで声があがる。
「煥先輩、今日もクール!」
「カッコいいよね、煥先輩!」



