「つまり、赤井家と青田家…両方の血を引く子供、という意味です。」


神主は難しい顔をしている。


「しかし、両家とも男子しかおりませんから、無理な話ですね。」


産まれた赤子も、男子である。


さらに蒼一朗と円治には、女の兄弟がいない。


「どちらかの家に女の子が産まれたら、縁談を組むと言うのはどうです?可哀想だが、その子供を、こっくりさんに捧げるしかありませんね。」


神主がそう結論づけると、指が動き、


ゆ、る、す、…。


と示した。



以来、両家から怪異は消え、むしろ繁栄した。


男の孫である藍を授かった蒼一朗と葵は、そんな昔話はとっくに忘却していた。



しかし、女の孫である朱羅を授かった円治と茜は、畏れた。


物心ついた頃より、朱羅に青田家の男子に嫁ぐよう、言い聞かせ、朱羅はそれを当然として受け入れた。



◇◆◇◆◇◆




「…と、言うわけだ。これで我らが許嫁であることは納得してくれただろ?」


朱羅は椅子から立ち上がると、冷蔵庫から冷えたコーラを取り出し、勝手に飲んだ。


「まあ、良くできた作り話だったよ。僕は忙しいんだ。帰ってくれないか?」


「藍、信じないのか?」


朱羅は悲しそうな目で僕を見上げると、ため息をついた。


「悪いけど、そんな話は僕じゃなくても誰も信じないと思うけど。」



「甘いな。呪いを馬鹿にすると、また我らはひどい目に遭わされるぞ…。」


朱羅は何を怯えているんだ?


呪いとか、こっくりさんとか、この科学が進歩した時代に、どうやって信じろと?


「安心しろ、僕らが結婚しなくても、何も起こらないよ。起こるわけが、ないだろ?」


朱羅は返事もせずに、玄関を出ていった。



良かった…変なやつからやっと解放されたぞ。


僕は部屋に戻り、昼寝の続きをすることにした。