【こつくりさんとは、狐狗狸と書く。動物霊であるらしい。】
それは知っている。
そう言えば、小学生くらいの時に流行ったよな。
女子が夢中になってた。
名前は、こっくりさん、ラブ様、星の王子様、など様々あったな…でも、やり方はほとんど一緒だ。
【信濃の人から聞いた話。こっくりさんは犬が嫌いらしく、周りに戌年の者がいると現れない。】
「へぇ、そうなんだ。」
「ちなみに、赤井には戌年はいない。」
朱羅が頷く。
「犬が嫌いなら、犬を飼えば?」
「それは私も考えたが、犬を飼おうとすると、妙に邪魔が入る。」
答えたのは紅太郎さんだ。
「犬をもらう予定だったのが、急にダメになったり、ペットショップは休業中だったり…。」
「今、思い出したんですが、うちの母親、戌年ですよ。」
そうだ。
父が申(さる)で母が戌(いぬ)という組合せなのだ。
よく喧嘩するんだよな。
「水樹おば様になかなか会えないのもそのせいか。…実は今回はおば様にも会いたかったが、急用でダメになった。」
「そうだ。朱羅と入れ替わりくらいに九州のおじさんちに行ったんだ。母さんの実家だよ。」
言われてみれば不思議だ。
僕に会わずに慌てていなくなったようなものだし。
「青田家に呪いが出ないのは、水樹さんのおかげかもしれんな。」
こっくりさんも、近寄り難いのか。…まさか母さんのせいだったとは。
「しかし、いかに戌年が苦手でも、間接的に引き離す事は可能だ。おそらく、水樹さんが急に実家に帰るよう仕向けたのはこっくりさんの仕業と言える。実家の人間を病気にさせるとか、そういう状況をつくるんだ。」
だとすれば、周りにも迷惑をかけることになるな。
いや、実際に子孫たちは迷惑しているんだが。
「べつに、私と藍が結婚すれば、それで解決するんだ。悩むことはない。」
朱羅、少しは悩め。
「僕らが結婚すれば解決、じゃないだろ?こっくりさんの目的は、子供だ。朱羅、もし僕と結婚し、子供が出来ても、その子供をこっくりさんに取られてしまうんだぜ?…お前はそれでいいのか?」
朱羅は迷いなく頷く。
「知っているよ。それがこの呪いを終わらせる方法だもん。」
「お前、血も涙もないのか?」
「私は藍とは違う。青田の人達はずっと呪いの事を忘れ、平穏に暮らしていたかもしれないけど、私達は違う。常に、こっくりさんの呪いに怯えながら暮らしてきたから。」
偶然、女の子が産まれたのが赤井家で。
そこから、朱羅が産まれた瞬間から、呪いは始まっていた。
想像もつかないが。
しかし、朱羅は決心しているらしい。
