「藍君て。派手な女の子がタイプなんですか?」

美貴さんが、引いている。

「ち、違います。妹はちょっと頭がアレなんです。」


「ひどい!藍のために頑張ったのに!」


朱羅がうるさい。
僕がいつ化粧の濃い女の子を好きだと言ったよ?

「二人は、仲良しなんですね。私は一人っ子だから羨ましいな。」


美貴さん。
そう言いながらも、顔が引きつっていますが。


「よ、用事を思い出しました。私は失礼します。」


「美貴さ…、」

ああ、行ってしまった!

朱羅のせいだぞ!


「お前、何がしたいわけ?どうして僕の邪魔をするんだ?」


「私は美貴のためにやったんだ。藍、彼女を思うなら、諦めろ。」


諦めるつもりだったさ。…僕は僕のやり方でね。

どうしてお前に邪魔をされなければいけないんだ?


無言で歩き出す僕の後から、朱羅も無言でついてくる。


「朱羅、そういう格好はやめなさい。」


紅太郎さんに叱られてやんの。

ガキのくせにそんなミニ、履いてるから。


「周りの男どもがお前を見てるぞ。気をつけなさい。」


「だって…。」


言われてみれば。
さっきから、ちらちらと視線を感じる。


怒ってはみたものの、確かに今日の朱羅はちょっと目を引くな。


僕はさりげなく彼女の隣に移動し、男たちの視線から守ってやった。


「紅太郎さんが心配するようなまね、するなよ。」

「だって…藍が言ったんだぞ。大人っぽい女性が好きって。」


ああ、成る程。


「僕は雰囲気の話をしただけだ。…化粧を濃くしてミニを履けばいいって意味じゃないよ。」


でもまあ。
僕のために頑張ったんだから、悪い気はしないが。


それに…不本意ではあるが、ちょっとだけ朱羅の変わりようにドキドキした。


だ、ダメだ!
僕には美貴さんって人が!


そう言えば、彼女と結局話が出来なかったな。


「藍君。君の気持ちは分かるが、あの娘さんに呪いの話をしても、おそらく信じないだろうな。」


紅太郎さんは悲し気に呟いた。


「私の母親…つまり、茜だが、村人たちから変人扱いをされていたよ。彼女は孫の朱羅の呪いを解くために必死だったから。」


「彼らが集めた資料を見せて下さい。」


僕は、きっぱりと言った。


「何か呪いを解くためのヒントになるかもしれませんしね。」


「あんまり期待しない方がいいぞ。」


朱羅の言うことは、もっともだった。


彼女は家につくと、リュックから古い帳面を取り出した。


ミミズののたくった字、とでも言おうか。


実際、文字を解読するだけで疲れそうだった。