年頃は僕とそう変わらない、女の子。



髪の毛を肩のあたりで切り揃えていて、一見、可愛い部類に入りそうだが、なぜか僕を睨んでいる。


しかも、目には涙をためて…。


僕、何かしただろうか…?


「えが…から…」



「えっ!?」


日本人に見えますが、まさかの外国語?
ちなみに僕は英語すら苦手だ!


「ひくっ…お前が早く助けに来ないから死ぬとこだったぞ!」



「は?」


すみません。
なぜ僕が責められなければ?



冷静に考えれば、ここは僕のうちで、彼女は見ず知らずの他人である。



「不法侵入、だよね?」


僕は彼女の足元に、割れた食器を見つけた。



「器物破損、だよね?」


「四文字熟語とか、何言ってるか分からん。」



こ、こいつ…!


「警察、呼ぶぞ。何番だっけ?」


僕はケータイを取り出した。



「いやあ!それだけはやめて、お願い!」


おお、急に慌て始めたぞ。


「私の話をちゃんと聞いてくれ!…今日は、お前の誕生日だから…ケーキを焼こうかと…初めてだから、うまくいかなかったけど…。」


確かに、こいつの言う通り、今日は僕の誕生日で、散らかった材料を見る限りは、ケーキを作ろうとしていたのは、分かる。



しかし、腑に落ちない。


「お前、誰?」


同じ学校の生徒ではないよな。見たことないもん。


「お前、じゃない!私には、赤井朱羅(しゅら)って名前がちゃんとついてる!」


朱羅って…どんなセンスだよ。


「分かった。…今回は見逃してやるから、もうするなよ。」



僕は玄関を指差した。


もちろん「出ていけ」という意味だ。



朱羅は首をかしげると、不思議そうに僕を見上げた。



「どうして私が出ていかないといけないんだ?…ああ、そうか。」


彼女は急にモジモジし始めた。何なんだ、こいつ…。


「私たちはまだ夫婦ではないから照れているのか?でも、今日から晴れて夫婦になれるんだ。つまり、私はこのうちにいる権利がある…」


「つまみ出されないうちに、さっさと出ろ…。」


頭がおかしいのか?

誰と誰が夫婦だって!?


僕はまだ高校生だし、突然現れた、どこの馬の骨とも知らぬ女と、結婚する気はない!


「照れるな、藍。」


「なぜ僕の名前を?」


「なぜって…馬鹿なのか?私と藍は、産まれた時から許嫁と決まっているだろう。」


いや、初耳ですが?


さりげなく馬鹿とか言われたし。


頭の変なやつに。


「…お前、夫婦とか言ってるが、僕はまだ結婚出来る年じゃないぜ?」



「ふふ。昨日まではな。藍は今日から18歳だろ?法的には結婚出来るはずだ。」


勝ち誇った顔。
僕は深いため息をついた。




「僕は…、まだ17歳だが。」