「ふむ。なかなか立派な神社だな。これでは魔も入れないだろう。」
僕は紅太郎さんをリュックに入れ、(頭だけ出してもらっている) 美貴さんの神社までやってきた。
「変なお願いをして、すみません。僕、どうしても彼女に直接会って伝えたくて。」
「構わないよ。」
紅太郎さんが話の分かる人…いや、狐で良かった。
「じゃ、行きますよ。」
鳥居をくぐると、樹齢の古そうな御神木があり、その先に狛犬が見えた。
美貴さんは、エプロン姿で庭を掃いていた…うう、似合うなあエプロン。
「なかなか可愛い。」
「でしょ?紅太郎さんは縫いぐるみのふりをしていて下さいね。」
僕が社に近づくと、彼女が手を休め、顔をあげた。
最初はびっくりしていたが、すぐに近寄ってきた。
「藍君?どうしたの。」
「え…と、家内安全祈願に。」
「父を呼んで来ます。」
「う、嘘だよ。美貴さんに用があって…来たんだ。」
僕がそう言うと、彼女はうつむいてしまった。
「麻季が、藍君は優柔不断ぽいから、やめた方がいいって…あ、悪く取らないで。彼女なりの励ましだから。」
僕が連絡しなかったから仕方ない。
「でもまさか、直接来てくれるとは思いませんでした。」
「う、うん。」
美貴さんの態度から、彼女も僕に少しは関心があるのかな、と思ってしまう。
それだけに、ツラい。
「僕、美貴さんと友達になりたくて。」
「わ、私も藍君をもっと知りたいです。」
すごくいい雰囲気。
もしかしたら、こんなチャンス、2度とないかも。
「でも1つ問題があるんだ…美貴さんが信じてくれるか分からないけど。」
「問題、ですか?」
僕は決意を固めた。
呪いのことを彼女に打ち明けよう。
それで受け入れてもらえなかったら…その時は男らしく諦める。
背中で、ペシペシ、と紅太郎さんも応援してくれている…ペシペシ…若干、痛いんですが…。
「じ、実は僕…。」
その時。
まさに告白しようとしたその時だ。
「お兄さまあ〜!」
と黄色い声が背後から聞こえた。
振り向くと、見知らぬ女性が笑顔で手を振っていた。
「お兄さまって…あ、藍君の妹さんですか?」
美貴さんが目を丸くしていたのも無理はない。
僕たちの目の前に現れた女性は、くるくるの長い巻き髪に、ばっちりメイク、それからかなり露出度の高いワンピースを着ていた。
…誰?
「もうっ、朱羅に黙ってどこに行ったのかと思ったわ!」
「思ったわ」?
「お…お前、もしかして朱羅か?どうしたんだよ、その格好。」
「お兄さまの好みのタイプになろうと思って。…似合う?」
似合う以前に、何か色々と間違ってるぞ。
