プルル、とメールが入る。
春人からだ。
【藍。おはよう!実は僕、麻季さんと付き合うことになった。藍のおかげだよ、ありがとう。】
チクリ、と胸が痛い。
いや、友達に彼女が出来たんだから、喜ぶべき場面だよな。
だけど、何だろう。
このモヤモヤした感情。
プルル…次は、浩紀からだ。
【藍。春人から、メール来たか?ビックリだよな。でもまー、良かったんじゃないか。俺は嬉しいぜ。】
浩紀…僕だって、嬉しいよ。
嬉しいんだけど、何だか素直に喜べないっていうか。
【俺も由紀さんと付き合えるよう、頑張る。お前も美貴さんとカップルになれるといいな。】
あ…そうか。
この気持ち、嫉妬なんだ。
友達は、自由に好きな女の子と恋愛出来るけど、僕には出来ないから。
プルル…
【ちょっと〜藍君。せっかく美貴のメアド教えたのに、まだ連絡してないでしょ!?何を考えてるの!?】
春人め…麻季さんに教えたな。
僕だって美貴さんにメールしたいよ。…だけど、それは彼女の身の危険を意味するんだ。
「はああああ…。」
特大のため息をついた。
その様子を、朱羅と紅太郎さんが心配そうに見守っていた。
二人は、何も悪くないんだ。むしろ、被害者じゃないか。
「紅太郎さん、こっくりさんの呪いを解く方法はないんですか?」
それが出来れば苦労しない、と言われそうだな。
狐の縫いぐるみは、ふわふわと宙を漂うと、僕の目の前で止まった。
「抵抗した結果がこれだ。…あまり刺激せん方が利口だな。でも、興味があるなら、私の両親と君の祖父母が残した、こっくりさんに関する調査書がある。見てみるかい?」
「私も読んだが、あまり役に立たないぞ。当時は情報がすくないからだな。」
朱羅は肩をすくめた。
「それに私は、藍と結婚さえすれば良いと思っているから、別に怖いものはないし。」
お前が良くても、僕は嫌だ。
「結婚を誰かに指図されるってのが気にくわない。」
「昔はほとんどが見合い結婚だ。気にくおうが、くまいが。」
朱羅って、年寄り臭いなあ!
僕はお前のそういう所が嫌いだよ!
どうして、抵抗しようとしないんだ!?
「もし、将来お前に好きな男が出来たらどうするんだよ。簡単に諦めるのか?」
「私には藍以外は考えられない。心配するな。」
いや、心配していませんけど。…僕は朱羅と結婚するつもりないしね。
「紅太郎さん…お願いがあるんですが。」
僕は狐の縫いぐるみを抱えると、朱羅には言いにくい事を、こっそりと頼んだ。
