ヴァンパイア・リーベ

「悪いけど、お前はリーラの傍に居てやってくれないか?」

「ミャ~?」

「一人じゃ寂しいだろうし、レドがまたやってくるかもしれないからな」

って子猫がレド相手に勝てるわけもねぇけど。

『いいよ』

「えっ?」

誰の声だ?

『どこ見てんのさ、僕はここだよ?』

その声は、俺の足元で聞こえた。

「まさか、黒猫……」

『失礼だな~、君が僕に付けてくれた名前で呼んでくれれば良いのに』

なんでこいつが喋ってんだ?

普通の子猫じゃなかったのか?

「なんで喋れんだよ……、つーかお前雌だろ」

『そんな事気にしないでよ、僕が喋れるのは君のせいだよ』

「はっ?」

俺のせいってどういう事だよ。

『あれ、もしかして覚えてないの?』

「あぁ、まったく何にも」

『まったく、君が僕を拾ってくれたとき僕に魔法かけたでしょ?』

「えっ?」

そうだったか?

前に一度親父たちに見つからないように、屋敷の外に出たことがある。

もちろん、その時は死に場所を探していた。

死に場所を見つけた時に、そこに黒猫が居たんだ。

もうすぐ死ぬってところで、俺が拾ったんだ。

「あー、確かに死にそうな時にお前を蘇生したんだ」

『そうだよ、やっと思い出した?』

そう俺は、この黒猫に蘇生術をかけた。

この蘇生術は、人間には効かない。

『その時君は、僕に俺の話相手になれっていって、言葉を教えてくれたじゃないか?』

「……覚えてねぇわ」

俺そんなこと言ったか?全然記憶にない。

『まぁ無理もないね、君死にそうな顔してたから、はっきりと覚えてないのかもね』

確かにこいつの言う通り、あの頃の俺は死ぬことしか考えていなかったからな。

『まぁいいや、僕はあの子とお話してくるよ』

黒猫はそう言うと、部屋へと歩き出す。

「そうだ、お前の名前リーラに付けてもらえよ」

『リーラに?』

「きっと俺がつけた名前よりいい名前、付けてもらえると思うぞ」

黒猫は、一瞬黙るのと奥の部屋へと戻っていった。

「なんだ、あいつ?」

拗ねたのか怒ったのか、まぁどっちでもいいか。