ヴァンパイア・リーベ

【シェイド】

部屋から出た俺は、屋敷の扉に向かって歩き出す。

(レドのやつめ……)

あいつは、また俺から大事なものを奪おうとした。

大事なものなんて言っているけど、会って三日も経っていない女を大事な女って……。

だけど、あいつはどことなくフェイに似ているところがある。

どこかは分からないが、あいつを守りたい。

傍に置きたいと思う。

しかし、フェイ以上の感情はあいつには抱いていない。

俺は、好きでもない奴を花嫁にするんだ。

けど、てっきり嫌だとか無理とか言うかと思っていたけど、素直に受け入れやがった。

「何なんだ?あいつは――――」

その時リーラの言葉を思い出す。

『 こんな得体のしれない私を花嫁に迎えるなんて 』

それはこっちの台詞だっつの。

こんな得体のしれない吸血鬼の花嫁になれるのかよ。

そう聞き返してやりたかったけど、あいつは俺と同じことを言うんだろうな。

「あいつの瞳は……」

リーラの瞳は、フェイと同じく綺麗だった。

「ミャ~」

「お前…」

気づくと黒猫が俺の足元で止まっていた。

「どけよ、これから薬貰いに行くんだよ」

「ミャ~」

「何だよ自分もいくだと?」

黒猫は、返事の変わりに頭を足にすり寄せてきた。