ヴァンパイア・リーベ

「あの、シェイド……」

「なんだ?」

やっぱり怒ってる……。

「さっき言ってた花嫁って、どういうことなの?」

私がそう聞くと、シェイドは言いづらそうに私から視線を逸らす。

「えっと…、言いたくなかったら別に「お前のためだよ」」

「えっ?!」

私の為って?

「さっきレドが言っていたように、お前の血は吸血鬼にとって特別な血なんだ。そして、それを狙って来る奴らが居る。吸血鬼以外にも狼の一族といった奴らも例外じゃない」

「じゃぁ、私は元の家には帰れないの……?」

「そうだな、だから俺は親父にお前をここに置きたいと話してきた」

でもそれは、私の為になっても、シェイドが犠牲になっている。

さっきレドが言っていた、シェイドはお父様の跡を継ぐことを嫌がっていた。

でも、シェイドは私をこの屋敷に置くために、嫌々ながらもお父様の跡を継ぐことを決めた。

「シェイド…気持ちは嬉しいけど、私なんかの為にシェイドがそこまでしなくても……」

「いいだろ別に、俺が親父の跡を継ぐことを決めたのも、お前をここに置きたいのも全部俺が決めたことだ、お前に逆らう権利はねぇ!」

そんな……。

でも、ここに居れば狼の一族や、ほかの一族たちからも見つからない。

「でもシェイド……、私を花嫁なんかにしなくても、ほかに方法があるんじゃ?」

「それはねぇな。俺がお前を花嫁に決めたのは、他の吸血鬼たちからお前を守るためだ」

「えっ?」

「この屋敷の中に居れば、他の吸血鬼たちがお前の血の匂いに気づくことはない。だけど、お前がこの屋敷から出たとき、お前の血を狙って他の吸血鬼たちが集まって来る」

じゃぁ、この周辺にもたくさんの吸血鬼たちが住んでいるってこと?

「それで、この屋敷の主である親父は、吸血鬼たちの中でも地位が高い吸血鬼だ」

「貴族ってことなの?」

「人間たちから見たらそうだな、そして俺はその地位の高さを利用してお前を花嫁にする」

「……?」

「つまり地位の高い吸血鬼の花嫁となる娘を、他の吸血鬼たちは手出しできない」

「あっ!」

そう言うことね、地位の高さがあればだれも私の血を狙って来ない。

もし狙って来ようとしても、シェイドが私を守ってくれる。

「でも、嫌じゃないの?」

「なにを?」

「こんな得体のしれない私を花嫁に迎えるなんて」

「お前は馬鹿か?」

シェイドは、軽く私のおでこにデコピンをする。