ヴァンパイア・リーベ

この人……。

このレドって言う人、見た目はいつも笑っていて、優しそうな人のように見えるけど。

けど本当は、とても怖い人なんだ。

「それに、あの傷の深さからして、本当の人間ならとっくに死んでるんだよ」

「じゃぁ、私は――」

「君は、人間じゃないんだよ」

「きゃぁっ?!」

その時、レドが両手で私の手首を掴んで覆いかぶさる。

「な、何をするんですか?」

掴まれている手首が痛い、振り払おうにも体に力が入らなくて、逆に体が熱くなっていく。

やばい……。

熱が上がってきて……。

目の前のレドの表情が歪む。

「さっきからさ、君の血の匂いがして仕方ないんだよね」

「えっ……」

この人も、私の血を求めて。

「でも……、狼の一族の人が私の血を舐めたとき、普通の人間と変わらない血だと言っていました……」

「まぁ、確かにあいつらから見たら普通の血の味だろうね」

「ど、どうゆう事ですか……?」

「こういう事だよ……」

「っ!」

レドは、唇を私の首筋へと当てると、小さな牙で私の首を軽く噛む。

「いたっ!」

そして、レドは私の血を飲み始める。

「や、やめて……」

息が荒くなっていく、このままじゃ本当に死んじゃう。

「奴らにとっては、普通の人間とは変わらない血の味だ。だけど吸血鬼からしたらね、特別な血の味なんだよね」

「吸血鬼にとって……?」

「そう」

「きゃっ!」

レドは、再び私の血を飲み始める。

私は、普通の人間じゃないの?

じゃぁ、お母様は私のお母様ではなかったの?

それとも、お母様自身も人間ではなかったの?

私は、お母様の娘だよね……。

助けて……シェイド!

その時、部屋の扉が勢いよく開けられた。

「っ!!」

私とレドは、同時にそこに視線を向ける。

「リーラっ!」

「シェ、シェイドっ!」

「あらら、良いところだったのに、なんでタイミング悪いかな?」

「レドっ!貴様っ!!」

シェイドは、拳に力を入れてレドに殴りかかる。

「よっと」

しかし、レドは私から離れると、それを簡単によけてしまった。

「お前、リーラに何してんだよ!」

「何って、その子の血がどんな味なのか確かめてただけだよ」

「なっ!」

シェイドは、私の元に来ると、噛まれた首筋を見て目を見開く。