ヴァンパイア・リーベ

親父のいうことは絶対に聞く、親父を裏切らない、親父に認められる行動を取れ。

俺の中でいつも中心に居たのは親父だ。

「狼の一族(ヴォルフ)を倒したら、俺を自由にしてくれるってのは、やっぱり嘘か
よ」

「なんだ、信じていたのか?」

「いや全然。むしろ絶対ありえねぇと思っていた」

でも、ちょっとだけ期待していたところはある。

「お前が本当に自由になりたいのなら、私の言うことを聞くことだ。もし聞けないようなら、あの娘を殺すだけだ」

「っ!」

な、なんで親父がリーラの事を知っているんだ?

まだ親父には何も言っていないのに?

俺は、後ろに居るシドに軽く目を向ける。

だけど、シドは相変わらず無表情で俺たちの話を聞いていた。

シドじゃないか?

もしシドが言ったのなら、ここに居るはずが無いか。

だとすれば、思い当たるのは一人だ。

レドのやつめ……。

あの時の様子を、あいつは全部見ていたってことか。

ジェドは、今は屋敷にはいない。

上級の吸血鬼たちと一緒に、どこかに行っているらしい。

「リーラに何をするつもりだよ……」

「それは、お前には話せない」

やっぱり、そう来るか。

「それに、お前はそのリーラって子をこの屋敷に置きたいのだろう?」

「それがどうした……?」

なんで親父は、俺が考えている事を当てることができるんだ。

「彼女の血については、後で詳しく調べるが、お前が私の後を継いでくれるなら、彼女をこの屋敷に置いてやってもいい」

「はっ?!」

俺は、耳を疑った。

だって、普通の人間を親父が俺の返事一つで置いてやっても良いと言ったからだ。

「本当なのか?」

「私は、約束はちゃんと守る」

おい、矛盾してるだろ。

約束守るって、俺を自由にするっていう約束は守らないのかよ…。

でも、リーラを俺の側に置けるなら、こんな話は他にないだろう。

だけど、親父の後を継ぐっていうのは、正直納得いかないが仕方がないか。

「分かった」

「シェイドなら、そう言うと思っていたよ」

くそ……。

まんまと親父の罠に引っかかったってことか。

「話は終わりだ。リーラが心配だから俺は戻るよ」

「あぁ、それと最後に一つ私から忠告だ」

「忠告ってなんだ?」

「彼女についてだ」

リーラについて?

「今彼女の体について調べているところだが、一つだけ分かったことがある」

「なんだよ?」

「彼女…リーラは、人間ではない」

「えっ?!」

リーラが普通の人間じゃないって、どういうことだよ。