ヴァンパイア・リーベ

「俺は、シェイドだ」

「シェイドさん……」

「さんは堅苦しいからシェイドでいい。それと、敬語はやめろ」

「は、はい」

初めて見たとき、殺気丸出しの危険な人かと思ったけど、今はそんな風には見えない。

それに、この人は私を助けてくれた。

「あの、ありがとう……」

「何がだ?」

「私を助けてくれて、お礼を言っていなかったから」

「別に礼なんていらねぇよ。あれは、単なる気まぐれだ」

この人の口ぐせ「気まぐれ」なのかな?

あの時も、気まぐれって言っていたし。

「あと礼を言うのは早い、今後のお前をどうするかは親父が決める」

「そ、そうなんだ」

確に、人間の私がここにいる事は本来許されない。

だって、吸血鬼は人間と関係を築こうとはしないし、吸血鬼は人間を嫌っているから。

多分処分を下すなら、私を殺すように言うかもしれない。

「だけど、お前は俺が拾ったんだ」

「えっ?!」

「だから、お前は俺の物ってことだ」

「……はい?」

それはつまり、私はシェイドの所有物ってことになるの

「シェイド」

「ん?」

その時、私たちの会話を遮るように扉がノックされる。