ヴァンパイア・リーベ

【シェイド】

「たく……」

こんな姿は、もう見ることはないと思っていたが。

こいつを見ると、フェイのあの時のことが頭を過る。

「こいつを助けろってことなのか?フェイ……」

すると、俺の足の近くで黒猫が女を見ながら軽く鳴いた。

「お前も助けろと?」

「ミャ〜」

俺は、深く溜め息をつき女を抱き上げる。

その時に、自分の手に血がついたため軽く舐める。

「な、なんだよこれ!」

あの狼野郎、この女の血は他の人間たちと変わらないと言っていただろ。

それなのに、この女の血を舐めたら俺の心がもっと血を求めてる。

こいつの血を――。

「いや、駄目だ!」

理性をちゃんと保て、とりあえず今はこいつを屋敷まで運ぶのが優先だ。

そのあとに、こいつが何者なのか聞けばいい。

生かすか生かさないかは、俺が決める。

俺は、黒猫と一緒に屋敷に向かって走り出した。

「また人間拾って来るよシド」

「そうだな……、判断は父さんに任せるさ」

「シドは優しいなぁ〜、俺だったら今すぐ殺しに行くのに」

「あの女のように殺すのか?」

「そうだね、簡単に殺すよ」

「……そうか」