ヴァンパイア・リーベ

ブロンドの瞳が一瞬紫色に変わると、男の人の動きが狼の一族よりも早くなった。

「なっ!」

そして、男の人は構えていた手を狼の一族に突き出す。

「大人しく動くなよ」

「ちっ!」

しかし、まだ狼の一族の方が早いのか、狼の一族は後方へと飛んだ。

「また逃げんのかよ、直ぐに殺してやるって言ってんのに」

「だからといって、簡単に死んでたまるか」

互の睨み合いは続き、私はそんな二人の戦う様子に圧倒されていた。

「これが、吸血鬼と狼の一族達の戦い?」

抱き抱えていた子猫は、じっと男の人を見ていた。

「もしかして、貴方の飼い主はあの人?」

私がそう聞くと、返事の代わりに私の手を舐めた。

「そっか、あの人が飼い主なんだね」

でも、何で吸血鬼がここに居るんだろう?

あの人はさっき、「気まぐれだ」って言っていたけど、ただの気まぐれで私を助けてくれるものなのかな?

それに、お母様から聞けば吸血鬼は誇り高き一族。

誇りも何もない私を助けてどんなメリットがあるのかな?

でも、助かったのは事実だし……。

だけど、あの吸血鬼は私も殺そうとしているよう気がする。